誰でも気軽に生前対策ができるツールのひとつとして遺言書がありますが、法律上有効となる遺言書を作成しなければ意味がありません。遺言書が無効となった場合、ご自身の大切な財産の行き先が希望通りにならないだけでなく、ご遺族にとっても遺産分割協議を行なうことになるため余計な時間を要することになります。
間違いの多い遺言書のひとつに、夫婦連名で遺言書を作成するケースがあります。民法では、ひとつの遺言書を2名以上で作成することはできないと定められているため、いくらご夫婦であってもそれぞれで遺言書を作成しなければなりません。
なお、遺言書には普通方式で3種類の方式がありますが、ご夫婦それぞれで遺言書を作成する場合は他の方式よりも確実に遺言内容を実行してもらえる「公正証書遺言」で作成すると良いでしょう。遺言書作成にあたってお困りの際は遠慮なく遺言書作成の専門家に相談下さい。
遺言書作成を迷っていらっしゃるご夫婦のうち、以下に該当される方は作成することをお勧めします。
- 夫婦それぞれで財産を所有している
- 子供がいない
- 親族とは疎遠になっている
- 事実婚である
遺言書がないことで生じうるトラブル
お子様のいらっしゃらないご夫婦がご夫婦ともにご逝去した場合、それぞれの両親やご兄弟が相続権を得ることになります。この場合、遺言書がないと下記のようなトラブルが起こりやすくなります。
ご両親ないしご兄弟が認知症であった場合
ご夫婦がそれなりの年齢でお亡くなりになった場合、ご両親またはご兄弟が認知症を発症している可能性もあります。認知症などといった判断能力が十分でない状態とみなされる相続人がいるケースでは法律行為である相続手続きを行うことはできないため、家庭裁判所に申請して、成年後見人を立てることになります。成年後見人は相続などといった手続きの代行をしてくれますが、報酬が発生する場合もあります。
相続財産がご自宅しかないという場合
財産がご自宅しかないという方は少なくありません。このようなケースではご自宅を売却し現金化してから遺産分割を行うことになりますが、居住者がいる場合は退去しなければならないためリスクが伴います。
また、売却しない場合は居住者が遺産分割した場合に相当する現金を他の相続人に支払わなければならないため、多額の現金を準備する必要があります。いずれの場合でも相続人同士の揉め事となる可能性が高くなります。
遺言書を作成していない場合、お子様がいらっしゃらないご夫婦だけでなく、お子様がいらっしゃるご夫婦でも相続トラブルとなるケースがあります。ご自身の大切なご家族が財産分割で揉めるリスクを減らすため、お元気なうちに遺言書を作成しておくことをお勧めします。