遺産分割の方針として民法に定められた法定相続分が存在します。
しかし、あくまで法定相続分は遺産分割割合の指針にすぎず、遺言書においては、法定相続分とは異なる相続分を定めることができます。
相続分は自由に定めることができますが、相続人間の公平性を欠いた相続分を定めることは相続トラブルの火種にもなりかねません。
こちらでは、相続人間の公平性を確保するために考慮すべき「遺留分」についてご説明いたします。
遺留分とは
遺留分とは、一部の法定相続人に保証された相続分の最低限度のことをいいます。
子どもや配偶者などの法定相続人は本来、被相続人の財産を相続する権利を持ちます。
しかしながら、遺言などによって特定の相続人や相続人ではない方にすべての財産を取得されてしまうなどして不本意な遺産分割を被った場合、遺留分権利者となる相続人は遺留分の主張を行うことで一定の財産を取得することができます。
遺留分権利者となりえる相続人
遺留分については、民法に以下の通りに定められています。
”兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次条第1項に規定する遺留分を算定するための財産の価額に、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける。
(民法第904条の2引用)
- 直系尊属のみが相続人である場合 3分の1
- 前号に掲げる場合以外の場合 2分の1 “
この規定から、遺留分権利者となりえる法定相続人と遺留分割合は以下の通りです。
兄弟姉妹には遺留分が認められません。
- 被相続人の配偶者…法定相続分の1/2
- 被相続人の直系卑属(子や孫)…法定相続分の1/2
- 被相続人の直系尊属(父母や祖父母)…法定相続分の1/2(配偶者不在の場合は1/3)
なお、遺留分権利者となりえる法定相続人であっても、被相続人により相続廃除や相続欠格者にされた者については、遺留分の権利が認められない場合もあります。
遺留分を考慮した遺言書作成
たとえば、妻と子2人に遺言書を遺す場合を考えてみましょう。
遺言書に記載された財産は1,000万円の現金のみであり、そのすべてを遺言者の長男にのみ相続させる内容で遺言書を作成するつもりでいました。
このとき、遺留分の算定の基礎となる財産は1,000万円です。配偶者と子の遺留分はそれぞれ法定相続分の1/2となりますので、妻(配偶者)の遺留分は1,000万円×1/2(法定相続分)×1/2(遺留分)=250万円、次男の遺留分は1,000万円×1/2(法定相続分)×1/2(遺留分) ×1/2(子の人数での均等分割)=125万円となります。
仮に長男にすべての財産を相続させる内容で遺言書を作成する場合、財産を相続した長男は母と兄弟から375万円の支払いを請求されてしまう可能性があります。
こうした事態がトラブルに発展してしまうことを防ぐためにも、遺言書作成の段階から遺留分を考慮した内容とすることが大切です。
京都相続遺言相談プラザでは、生前の遺言書作成から遺言書のない相続での遺産分割の進め方まで、相続・生前対策の様々な場面でお客様のお手続きをサポートさせていただいております。
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